皆さんもそうだと思いますが、高価なアウターを購入する際は色々な意味で慎重になります。
サイズは大丈夫か?
着心地はどうなのか?
長く着られるか?
着こなしやすいか?
衝動買いではないか?
などなど…
試着するだけで簡単にわかることから、実際に使ってみないとわからないことまで、躊躇う理由も様々ですね。
さて、またしてもアウターを購入してしまった私ですが、めでたくターゲットとなったのはノースフェイスで一二を争うほどの防寒性を誇る極地対応アウターこと『Antarctica Parka/アンタークティカパーカ』です。
こちらのアンタークティカパーカは人気もさることながら、価格が80000円オーバーと財布の中身が南極大陸なみにお寒くなるお値段。
当然のことながら、私も入念に下調べをしてから購入に至った訳ですが、今回はこの経験を元に、これからアンタークティカパーカを購入する方向けのアドバイス的な内容を綴ってみたいと思います。
購入者は語る『アンタークティカパーカ』を買う前に知っておきたいコト
前置きとして、王道的なインプレは色々な方が既にされているので、そこはサラッと流します。
私は購入前に知っておきたい情報や実際の着用感や簡単なお手入れの方法など、重箱の隅をつつくような内容でお届けします。
さて、今回購入したアンタ―クティカパーカは2021FWモデルの『ND92032』、カラーはTNFネイビー(NY)を選びました。
ブルー系は2017FWモデルのイノギュレーションブルー(IB)や、2019FWモデルのフラッグブルー(FG)が過去にありましたが、2021FWモデルのネイビーはその中で最も落ち着いた色合いになっています。
因みに、表地のナイロンは紫外線に弱い性質があり、オレンジやレッド系の発色の良いカラーは経年劣化で色あせしやすくなります。過剰に気にする心配はありませんが、雪焼けするような環境で長時間&複数年使用した場合だと影響が出る可能性があります。
逆に街着向きなブラックなどの暗い色は、摩耗によって白っぽいくすみ汚れが目立つようになり、グレーやオリーブ系の中間色は皮脂による黒ずみ汚れが目立つ傾向にあるでしょうか。
また、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は石油ファンヒーターなどの燃焼ガスで劣化する性質があるので、ストーブと同じ室内に吊るしっぱなしにせず、別部屋のクローゼットなどに収納するのがオススメです。
気になるサイズ選びですが、購入前の下調べによると『大き目のサイズ感につき、ワンサイズ下を選ぶべし』との説明が散見されたので、その通りにするつもりでいたのですが、実売店に辛うじて在庫が残っていた姉妹品のサザンクロスパーカが思っていたよりも小さく、Mサイズを購入するのを躊躇します。
結局、推奨サイズ通りのLサイズを選びましたが、身長180cm強、体重65kg、痩せ型の私はこれで正解でした。
普通にMサイズでも着られますし、細身の私がLサイズを着ると内部に多少余裕のある着用感になりますが、ガバガバ過ぎることも無く、インナーに厚手のフリースやスウェットも着込めます。
一番気になっていたのは袖丈の長さですが、事前情報ほど過剰ではなく、ベルクロ無しでもギリギリ違和感のない丈でした。
実は、防寒性の高いアウターを求めるにあたって『アンタークティカパーカ』『サザンクロスパーカ』『ヒマラヤンパーカ』のどれを選ぶかで悩んだ経緯があります。
条件の一つとして『5年は使いたい』というのがあり、その時点でサザンクロスパーカは候補から外れました。
サザンクロスパーカはアンタ―クティカパーカの後に発売された姉妹製品ですが、表地に採用されているHYVENTがポリウレタンコーティングありきの素材のため、三年以上の使用ではどうしても経年劣化や加水分解の不安が付き纏います。
アンタ―クティカパーカよりもポケットの使い勝手が良く、生地もしなやかで着心地が良いだけに、三年間ヘビーに使う目的でなら文句は出ませんが、色々と惜しいアウターですね。
最後に残されたヒマラヤンパーカとは最後まで競りましたが、バルトロライトジャケット以上に着ぶくれするサイズ感&アンタ―クティカパーカよりも高価、この二つの理由でお流れになりました。
何となく、来シーズンくらいには買ってレビュー記事をアップしている気もしますが…
話を元に戻しますが、アンタ―クティカパーカの外観はヒマラヤンパーカと比べてかなりスッキリしていて、パッと見ではダウンがたっぷり詰まっているようには見えません。
Lサイズを平置きした際の実寸サイズは【身幅】63cm、【着丈】78cm、【袖丈】67cm、【肩幅】53cm、【裾幅】60cmでした。
素人採寸なので多少の誤差はありますが、ほぼ公式のサイズスペックと一緒ですね。着丈だけ公式83cmに対して実寸78cmと5cm近く短いのが気になりますが、ノースフェイス公式ではサイズタグ付近にあるハンガーループの付根から測る方法とは、異なる基準で測定されているのかも知れません。
さて、アンタ―クティカパーカを語る上で避けて通れないのが『重さ』と生地の『硬さ』でしょうか。
こちらよりも200gほど軽いサザンクロスパーカを手に取った際も重いと感じましたが、アンタ―クティカパーカはそれを上回るおよそ1900gもあります。
常にお茶の2Lペットボトルを持ち歩いている感覚ですが、不思議と『さて、今日も着るぞ!』とハンガーごと手に取った時にその重さを実感するくらいで、実際に着てしまうと短時間で慣れてしまいます。
とはいえ、長時間立ちっぱなしで着用すると、人によっては肩こりなどの症状が出やすいため、『重さ』に関しては覚悟を決めて購入しましょう。
続いて生地の『硬さ』ですが、個人的に思っていたよりも硬くないゾ…という感想でした。以前にノースフェイスのマウンテンジャケットを愛用していた経験があるせいだと思いますが、140デニールとアンタ―クティカパーカの方が厚い生地なのに、何故かこちらの方がしなやかで着心地が良いと感じました。
ベビーオンスの未洗いデニムのように生地が糊でバリバリだぜ…といった着心地ではないので、こちらも重さと同様に慣れの問題かも知れませんね。
ここからは細部について語って行きますが、やはり気になるのはファーを含むフードまわりの使用感でしょうか。
私は首が太い方ではありませんが、上画像のようにフロントをしっかり閉じた状態で着用すると首まわりがファーでぐるりと覆われ、風や冷気の侵入がシャットアウトされます。
ネックウォーマー要らずな仕様ですが、ボリュームのあるフェイクファーにより窮屈とまではいわないまでも首まわりに若干の圧迫感があるため、一番上のスナップボタンを外しジッパーを少し下げて着るくらいが丁度良いです。
人によっては高価なアウターなのにエコファー・フェイクファーである点に不満を感じるかも知れませんが、リアルファーは毛抜けや虫食いの心配があるので、逆にエコファーで良かったと思えますね。
因みに、ネット上で探すとファー部分を修理したり、リアルファーにお直ししてくれるサービスも見付かります。
フロントジップはダブルフラップ仕様で防風性は完璧、おまけにフラップにも卒なくダウンが封入されていました。
首の周囲には定番のダウンチューブも備わっていて、フロントを大きく開いた状態でも寒さを感じづらいです。
また、以前にこのブログでも記事にしましたが、この手のアウターはベルクロが多用されているためニット素材のインナーとは大変相性が悪いです。
素材に関わらず編み物が少しでもベルクロ触れると、糸が飛び出して一撃でお釈迦になってしまうので、ニット系インナーや小物を着込む際はくれぐれも注意しましょう。
私はそれほど気になりませんでしたが、ファーの毛先が頬や口、耳などに触れて不快感を覚える可能性があります。
七つあるスナップボタンでファーは簡単に取外し出来ますが、ファーを取外した後のフードは縁が二重になり、見栄えが悪くなってしまうのが難点。
正直、ファーを外した際に行き場のなくなったスナップボタンを固定できる仕組み欲しかったところですが、ファーのチクチク感がどうしても苦手…そんな方だけ取外してみましょう。
因みに、ファー単体の重量は110gほどなので、取り外してもあまり軽量化には寄与しません。
あくまでも個人的な意見ですが、防寒性重視で横殴りの吹雪にも備えたい、見た目の良さを優先したい、そんな方はファー付きのままで。
実用性重視で雪や雨、風除けとして頻繁にフードを使いたい、首まわりが窮屈なのはイヤ!、そんな方はファー無しで、こんな使い分けがオススメです。
余談ですが、ファー付きのままフードを被ると想像以上に頭部がデカくなり、見た目もガチなイヌイットスタイルになります。傘で足りる程度の雨除けや雪除けに使うには多少の気恥ずかしさが伴い、ローブ的に軽く被る感じにアレンジできないのが残念。
首まわりで少し気になったのが矢印のチンガード部分です。顎や首にジッパーの冷たい感覚が伝わらないように備わっている物ですが、ノースフェイスの他アウターと比べても、作りが中途半端に感じました。
ある程度は機能してくれますが、コシのないフラップ状になっているため、ヨレたり裏返ったりして使い勝手がイマイチですね。
また、小まめに洗濯できないダウン系アウターは首まわりが皮脂や摩耗で劣化しやすいので、ネックウォーマーの併用を推奨します。アンタークティカパーカはファーの影響であまり厚手の物は使えませんが、幅24~26cm、厚さ5mmくらいの物か、それ以下の薄手の物がサイズ的に無理なく使えます。
袖先に目を移すと、内部にインナーカフのある二重構造になっています。
伸縮性のあるリブ状になっているので、わざわざベルクロで袖口を絞る必要が無くて便利!と思っていたのですが、実際のフィット感はかなり緩く、冷気の侵入をしっかりガードしてくれる印象は薄いですね。
数値で見ても、外側の袖口が17cmに対して内側の袖口は11cmとかなり太目の寸法になっていて、手袋の上からでもインナーカフをフィットさせられるようにする意図があるのかも知れません。
また、インナーカフの生地には動物の天然毛やポリウレタンが混紡されているので、虫食いの被害や経年劣化の可能性もあります。
購入前はポリウレタン混紡ということで、数年後にこの部分がダルダルになるのでは?と心配していましたが、混紡率は1%な上に元からフィット感が強くないので、過剰に気にする必要はないかも知れませんね。
余談ですが、外側の袖口やベルクロ部分には前述した摩耗や皮脂による白いくすみ汚れが出来やすいです。大抵は洋服ブラシで擦ると洗わずに落とせるので一本あると便利です。
また、荒いナイロン生地は静電気で吸着した埃が表面に引っ掛かって留まりやすいため、静電気除去機能のある洋服ブラシがオススメですね。
デリケートな生地ではないので、柔らかい馬毛ブラシではなく硬めの豚毛ブラシの方が向いています。
続いて、重さや生地の硬さ以上にアンタークティカパーカの購入を躊躇わせている影の主役、ポケットの仕様についてです。
ご存知の方も多いと思いますが、アンタークティカパーカは極地用アウターということもあり、手袋の併用を前提に作られています。
そのため、胸部ポケットも腰部ポケットもハンドウォーマーポケットとしては殆ど機能せず、ポケット入り口の作りもポケットの位置も手を入れるには不向きで、小物を収納するためだけに存在している印象でしょうか。
辛うじて胸部ポケットの内側には前面にだけ柔らかいフリース地が備わっていますが、胸部・腰部ポケットの手前部分にはダウンが封入されていないため、素手だと気休め程度のあたたかさしか得られません。
本体の防寒性が高いので、あまり寒くない地域にお住まいなら手袋無しでもOKですが、寒さの厳しい北国で使うなら必ず手袋を併用しましょう。悔しいですがこの点は姉妹品のサザンクロスパーカの方が優れています。
フロントジップはダブルジップ仕様になっていて下側からも開けるようになっていますが、コート風の着こなしになるため出番は少ないかも知れません。
街着として使うならフロントをフルオープンにした方が見栄えが良いですし、その方が蒸れを一気に逃せますから。
裾部分にはフィット感を調節したり冷気のまわり込みを防ぐドローコードが備わっています。因みに、この部分を絞り過ぎると、生地の摩擦でジーンズ等から裾の内側に色移りしやすくなるので注意しましょう。
ジーンズ愛用者は色移りが目立たないブラックや私と同じネイビー選ぶのが吉です。
最後になりますが、私が一番魅力を感じたのがこの部分です。
アンタークティカパーカとサザンクロスパーカにはウエスト部分にもドローコードが備わっていて、胸部ポケット内部にあるドローコードを引き絞ると、フィット感やシルエットの微調整が可能です。
以前に愛用していたモンベルの極地用ダウンジャケット『ポーラーダウンパーカ』も優秀でしたが、ウエスト部分のフィット感を調節できず、裾から冷気が回り込みやすいという欠点がありました。
とはいえ、アンタークティカパーカは生地が硬いため、絞り過ぎると見栄えの悪い縦ジワが出来やすくなります。過剰だと逆にシルエットが悪くなるので、あくまでも微調整の範疇に留めておきましょう。
オーバーサイズを購入して、このドローコードでシルエットを調整する…そんな使い方にはあまり期待しない方が良いですね。
まとめ
思いのほか長文になってしまいましたが、少しはお役に立てたでしょうか?
肝心の防寒性ですが、やはり関東以西ではオーバースペックで街着としては着こなしが難しい部類に入ります。
私の感覚では、気温0度でも風が穏やかだとフロントフルオープンで十分、風が強まってようやく胸元までフロント閉じる感じですね。
北国住まいの私でも、アンタークティカパーカをしっかり着るのは気温が氷点下で風が5m/s以上の荒天時くらいで、あとはちょっとした外出で重ね着が面倒臭いなぁ~と不精したくなった時でしょうか。
最後になりますが、アンタ―クティカパーカは安物のハンガーではなく、スーツ用のしっかりしたハンガーに吊るしましょう。
安物のハンガーに長時間吊るしたままにしていると、自重で肩部分のロフトが潰れてしまい知らず知らずのうちに防寒性が低下してしまうことがあります。