最近では首都圏でも珍しくなくなりましたが、滅多に雪が降らない地域でまとまった積雪があると、交通機関の麻痺と伴に歩行者の転倒による怪我がニュースで報じられます。
積雪が当たり前の地域に住む方なら『どうして、このくらいの雪で転ぶの?』と本気で不思議に思うでしょうが、単に雪に対しての装備や経験が不足しているだけなのです。
そりゃあ、雪道や凍結路で一般的な踵から着地する歩き方をすれば確実に転びますし、靴底に殆ど溝のない革靴やスニーカーなら尚更です。
転ばぬ先の杖と言う訳ではありませんが、今回は雪道や凍結路でも滑りづらい上に、ビジネスやカジュアルでも使えるオススメのウインターシューズ&ブーツを幾つか紹介してみます。
ここに注目!靴底に見る”防滑シューズ”の特徴
私自身、積雪のある北国に住んでいるので”冬靴”と呼ばれるこの時期にしか履かないウインターシューズには結構なこだわりがあります。
冬でもウォーキングを欠かさないので、冬靴には滑りづらいトレッキングシューズやトレイルランニングシューズを使っていますが、それでもシーズン中は足元を滑らせてヒヤッとする場面が幾度もあります。
凍結路を安全に歩くには、ホームセンターなどで手に入る後付けの簡易スパイクを使う方法もありますが、ここ数年で凍結路でもスパイクを必要としない新しいタイプのウインターシューズが登場しています。
新しいウインターシューズはアウトソールに特徴があり、金属製のスパイクではなく靴底の広い範囲にガラス繊維が埋め込まれています。
肉眼では見えないガラス繊維の棘が、凍結した路面に突き刺さる事でグリップ力を発揮する仕組みで、今までのウインターシューズと比べて靴底が平面的な作りになっています。
初見では、本当にこんな革靴みたいなアウトソールで大丈夫なのか…と不安になる形状なのですが、実際に使用してみると確かにアイスバーンなどの凍結路では滑らず、接地面の広さがそのままグリップ力に繋がっている印象でしょうか。
また、雪深い道でも靴底に雪が付着せずに普通に歩けますし、雨やシャーベット状の雪でも滑りづらい様に水抜け用の溝が設けられている製品もあります。
大半がビジネス用やカジュアル用のコンフォートシューズとして設計されているので、荒れた凍結路や雪深い道を延々と歩くようなアウトドア的な用途には向きませんが、冬場の通勤・通学・買い物・舗装路のウォーキングなどの普段使いの範疇では、十分な防滑性や防水性を発揮してくれます。
SPORTH『スぺラン』
防滑シューズのトップバッターは、旧”月星”ことムーンスターの“SPORTH/スポルス”です。
防滑シューズではかなり名の知られたブランドで、滑らない靴の比較対象として頻繁に名前が挙がります。
メンズ用もレディース用も大変バリエーションが豊富で、その中でも特に防滑に注力した製品には“スぺラン”と呼ばれる特殊なソールが使用されています。
スぺランにはミクロレベルのガラス繊維が垂直に配置され、氷上や濡れた大理石の上などで高い防滑性を発揮します。
また、完全防水では無いものの、地面から4cm、4時間までの防水機能と透湿性を備え、ワイズは3E~4Eと日本人の足に合わせて作られています。
サイズ感はやや大き目で、ビジネス用は足先に捨て寸があるので余計に大きく感じますが、厚手の靴下を履いて丁度良いくらいなので、ウインターシューズとしてサイズ選びをする場合は特に大き目や小さめを選ぶ必要は無いかも知れません。
前述した様に、スポルスにはビジネス用やカジュアル用、ローカットやハイカットなど大変種類が豊富にあるため、どれがスぺランシリーズなのかわかりづらい部分があります。
実店舗なら靴底で判断する方法もありますが、簡単にわかる方法としてWM3121WSRやMB4981TSRなどの製品番号の末尾に”SR”と表記されているシューズがスぺランシリーズの目印となります。
ASAHI 『トップドライ』
前項のスポルスのライバルとも言えるのがアサヒの“TOPDRY/トップドライ”です。
ラインナップの豊富さではスポルスに劣りますが、メンズ・レディース共にカジュアル用やビジネス用として使えるローカットやハイカットの製品がしっかり揃っています。
こちらのアウトソールにもガラス繊維が使用されていますが、それに加えてセラミック繊維も配合され、おまけにソール自体にもグリップ性に優れる特殊ラバーが使われています。
ソールの防滑性はスぺランシリーズよりも上だと称され、素材には防水性と透湿性に優れるゴアテックスメンブレンが使用されている点も評価を高めています。
癖のないデザインの製品が多く、機能性にも卒がありませんが、唯一の欠点はゴアテックスとの兼ね合いで天然皮革の製品がラインナップされていない事かも知れません。
トップドライのワイズも3E~4Eと日本人の足に合わせたサイズになっていますが、縦方向のサイズ感がかなり大き目な様で、人によっては厚手の靴下を履いても1サイズ以上の余裕を感じる場合があります。
いつもよりもワンサイズ小さ目を選ぶかか、素足の実寸と同じサイズを選びましょう。
YONEX『パワークッション アイスキャッチ』
シューズメーカではなくスポーツ用品メーカーのヨネックスが手掛ける防滑シューズが”POWER CUSHION/パワークッション”シリーズの“ICE CATCH/アイスキャッチ”です。
シューズメーカーではないので、前述の2社製品よりもバリエーションが少ないのは間違いありませんが、ラインナップの全体像が把握しずらく、旧モデルや現行モデルの区別が付きづらい印象です。
例によってソールにはガラス繊維を配合したアイスキャッチソールが使われ、防水性は地面から4cmで6時間までと、スポルスのスぺランシリーズに似た仕様になっています。
防滑性はスポルスにやや劣りますが、スポーツ用品メーカーのウインターシューズだけに抜群の歩きやすさを誇ります。
透湿性に乏しい点は残念ですが、ヨネックス謹製のパワークッションの効果で長距離を歩いても疲れづらく、冬場のウォーキングに最も適した防滑シューズかも知れません。
因みに、サイズ感はごく一般的ですがワイズが4.5Eとかなり広めの仕様です。
CARAVAN『スノーキャラバン』
今回紹介する防滑シューズの中で、唯一ソールにガラス繊維が使われていないのがこの“スノーキャラバン”です。
登山靴で評価の高い国産メーカー”CARAVAN/キャラバン”がリリースしているウインターシューズで、ゴアテックスは使われていないものの”AirRefine”と呼ばれる透湿防水ライニングが使用されています。
ソールには低温に強いビブラム社の”Ice Trek”、つま先と甲の部分には高機能中綿素材の”シンサレート”が使われ、シューレースは結ぶ必要の無いクイックリリースレーシング仕様になっているなど、登山靴メーカーらしさを感じる様々な機能が詰め込まれています。
スノーキャラバンのサイズ感はほぼ標準なので、厚手の靴下を履くならワンサイズ上を選びましょう、ワイズも3Eと日本人向けのサイズです。
機能性の高さは認めるものの、正直デザインがイマイチで普段使いもするなら上画像の旧モデルの方が使い勝手が良さそうです。
ソールはビブラムでなく、クルミ殻配合のラバーアウトソールが使われ、スタッドレスタイヤでよく見掛ける仕様になっています。
ビブラムの品質に疑いはありませんが、個人的にこちらの旧型アウトソールの方がグリップしてくれそうなイメージがありますね。
用途としては、ヨネックスのアイスキャッチと同様に冬場のウォーキング等に向いていますが、こちらの方が悪路や寒さに強く、よりアウトドア寄りな仕様になっていると思います。
余談ですが、スノーキャラバンは今回紹介したウォーキングシューズタイプよりもブーツタイプのスノーシューズの方が有名で、特に女性に人気があります。
まとめ
雨や雪、凍結路でも滑らないウインターシューズを幾つか紹介してみましたが、どれも防滑性の高いガラス繊維を配合したソールが使われていました。
正直、どれを選んでも防滑性に明確な差は感じないと思いますが、カジュアル用やビジネス用を考えているならスポルスのスぺランシリーズ、防水性と透湿性を重視するならアサヒトップドライ、ウォーキングなど長い距離を歩く目的ならヨネックスのアイスキャッチ、ハードに使いたいならスノーキャラバンといった選択になるでしょうか?
ガラス繊維配合のソールは確かに滑りづらいですが、荒れた状態で再凍結した路面やスタッドレスタイヤでつるつるに磨き上げられた路面では流石に滑りやすくなります。
下手な過信はせずに、素直に簡易スパイクを併用しましょう。