以前よりもボトムスの選択肢が増えた事で、一昔前よりも存在感は薄れましたが、ジーンズは依然としてカジュアルファッションに不可欠なアイテムです。
私自身、ジーンズ好きが高じてクローゼットに山ほどジーンズを抱えていた時期もありましたが、現在はお気に入りの数本を残すのみとなりました。
理由は色々とありますが、ジーンズ特有の暑苦しさと圧迫感のある着心地が、加齢と共に苦手になったことが一番大きいでしょうか?
人間、一度でも楽をすると元に戻れなくなると言いますが、着心地の良いイージーパンツやジョガーパンツに慣れてしまうと、窮屈なジーンズには中々手が伸びなくなります。
少し前の話ですが、汚れが気になったので数少ないジーンズの一本を久々に洗濯してみました、因みに賛否両論ありますが、私はジーンズを「洗う」派です。
15年以上前に購入し、10年近く穿き続けている生え抜きの一本ですが、膝のあたりの生地が伸びて、随分とくたびれた感じになっています。
そろそろ限界かなぁ…と思いつつ洗濯してみると、不思議な事に伸びた膝の部分が元に戻っています。
すっかり失念していましたが、このジーンズがジンバブエコットン製だったことを思い出しました。
ジンバブエコットンとは?
ジンバブエと聞くとスーパーインフレで有名なジンバブエドルが真っ先に頭に思い浮かびますが、アフリカ大陸南部に位置する一国家です。
そこで産出されるジンバブエコットンは、標高1500mの高地で栽培された無農薬のオーガニックコットンで、手摘みで丁寧に収穫された世界最高品質のコットンと言われています。
元々は高級なドレスシャツなどに使われていた素材ですが、最近ではアメカジなどに代表されるカジュアルな衣類にも使われるようになりました。
値段が高いだけで、通常の物との違いがわからない高級品は腐るほどありますが、このジンバブエコットン製のジーンズは手で触れた瞬間、脚を通した瞬間に違いがハッキリとわかる代物です。
すっかり穿き慣れてしまい今でこそ感覚が鈍くなっていますが、初めて脚を通した時は「これ、本当にジーンズ?」と思わず零すくらい感動した記憶があります。
ジンバブエコットン製のジーンズは、卸し立ての新品でも何年も穿きこんだヴィンテージジーンズのような柔らかな風合いがあり、「ジーンズは硬く着心地が悪い!」と言う固定観念を見事に覆してくれます。
陳腐な例えですが、無料で配られているポケットティッシュと保湿成分入りの高級ティッシュくらい肌触りが違い、ユ〇クロ製ジーンズの様な硬くゴワゴワした着心地とは隔絶したものがあります。
通常よりも柔らかい生地なので、膝などテンションの掛かる部分は伸びやすいのですが、冒頭で触れたように洗濯や水通しで元に戻る、抜群の復元力があります。
ジーンズとは思えないほど柔らかいという部分で勘違いしそうになりますが、ジンバブエコットン製の耐久性は同オンスなら普通のジーンズよりも高く、丈夫さも折り紙付きなのです。
おすすめのジンバブエコットン製ジーンズ
私の保有しているジンバブエコットン製ジーンズは、ブランドジーンズが全盛だった2000年代初期に購入したもので、現在は生産していないGUCCI製のブラックジーンズです。
久々にジーンズ熱が再燃したので、追加でインディゴカラーのジンバブエコットン製ジーンズを購入してみようと思い立ち、色々と調べてみると、どうやら“フルカウント”、“桃太郎ジーンズ”、“ジャパンブルージーンズ”、この3つのブランドが特に人気を集めている様ですね。
備忘録ついでに、これら3つのブランドのジンバブエコットン製ジーンズを簡単に紹介してみますが、どれも日本発のジーンズブランドと言うのが興味深い点です、今や日本は高品質ジーンズの一大生産地になっているんですね…。
フルカウント/FULLCOUNT
“フルカウント/FULLCOUNT”はデニムをメインとした大阪のアパレルメーカーでレプリカジーンズの先駆けとなったブランドです。
妥協を許さない高品質なジーンズとしても知られ、フルカウントのジーンズは繊維を傷つけぬよう手摘みされたジンバブエコットン100%の生地が使われています。
フルカウントのジーンズにはシルエット別に定番モデルが5種類あり、0151と1101は細すぎず太すぎずの定番シルエット。
1108はフルカウントの定番モデルでは一番人気のやや細身のすっきりとしたシルエット。
1109は定番モデルでは最も細身で裾にかけてテーパードした今風のシルエット。
1110は2016年に登場した新モデルで、1109よりも腰まわりにゆとりを持たせつつも、よりテーパードを効かせた裾幅の狭いシルエットです。
無印の定番モデルはどれも生地が13.7オンスとそれほど厚く無い印象です、コットン100%は今時のストレッチジーンズの様に生地が伸縮してくれないので、ゆとりをもって着こなしたいなら太目の0151か1101を選ぶのも手でしょうか?
流行に左右されず少しでも長く着続けたいなら、ベーシックなシルエットの1108、現代風のシルエットが好みなら1109か1110がおすすめです。
フルカウントのジンバブエコットン製ジーンズは丈夫さよりも、柔らかい生地の風合いを楽しむ点が重視されている印象ですね、因みにどのモデルも未洗いのノンウォッシュと洗い済みのワンウォッシュを選べます。
色落ちを楽しみたい方はノンウォッシュ、洗濯による縮みが気になる方はワンウォッシュを選ぶことになりますが、フルカウントの公式ページによると、洗濯で縮んだ後でも約2~3cmの伸びが生じてくるそうです。
桃太郎ジーンズ/MOMOTRO JEANS
2006年にブランドが立ち上がった“桃太郎ジーンズ/MOMOTRO JEANS”も高品質なジーンズをリリースしています。
ジーンズの一大生産地として観光名所にもなっている岡山県倉敷市児島発祥のブランドで、同じジンバブエコットン100%のジーンズでも、前述のフルカウントよりも耐久性に重きが置かれている印象です。
ヴィンテージ、出陣(しゅつじん)、銅丹(どうたん)、と大きく分けて3つのレーベルがあり、ヴィンテージと出陣は特濃のインディゴ仕様で生地は15.7オンス、銅丹はイエローステッチ仕様で生地は若干軽い14.7オンスなど、レーベル毎に違いがあります。
他にも、ヴィンテージは未防縮、出陣は防縮加工、銅丹は防縮加工とスキュー加工(ねじれ防止)などの違いが見られ、ヴィンテージ⇒出陣⇒銅丹の順に現代風のシルエットが増える印象ですね。
どのレーベルにも太目と細目のシルエットが準備されていますが、ベーシックならヴィンテージレーベル、今風のシルエットなら銅丹レーベル、その中間でブランドアイコンの二本線にこだわりたいなら出陣レーベルが良いでしょうか?
因みに、画像左がヴィンテージのタイトストレート、画像中央が出陣のナローテーパード、画像右が銅丹のスリムテーパードとなります。
ナローテーパードとスリムテーパードの違いが分かりづらいですが、股上が深く腿まわりにゆとりがあるのがスリムテーパードで、股上が浅く裾幅がより狭いのがナローテーパードとなります。
桃太郎ジーンズはライトオンスの銅丹レーベルでも14.7オンスですから、フルカウントの13.7オンスよりもヘヴィーオンス志向と言えます。前述した様に、フルカウントが柔らかな着心地重視なら、桃太郎ジーンズは耐久性重視と言った感じですね。
また、フルカウントはウォッシュの有無を選べましたが、桃太郎ジーンズは縮みを心配する必要が無いワンウォッシュのみの販売となっています。
桃太郎ジーンズは海外での人気も高いそうですが、個人的にブランドアイコンの”二本線”で一目で桃太郎とわかる、出陣レーベルが一番好みでしょうか。
ジャパンブルージーンズ/JAPAN BLUE JEANS
“ジャパンブルージーンズ/JAPAN BLUE JEANS”は2010年に立ち上がったブランドで、前述の桃太郎ジーンズの姉妹ブランドにあたります。
ヴィンテージジーンズの他に、カラージーンズやストレッチジーンズなど、ファストファッション寄りのラインナップが目立ち、今回紹介する中では少し異質な印象ですね。
生地そのものへの拘りが大変強いブランドですが、ジンバブエコットン100%の製品は存在せず、縦糸(たていと)にジンバブエコットン、緯糸(よこいと)にメンフィスコットン&オーストラリアコットンを使ったジーンズが幾つかラインナップされています。
14オンスの生地が使われ、シルエットはタイトストレート(画像右)、テーパード、スキニー、バゲット(画像左)の4種類です。バゲットという聞き慣れないシルエットがありますが、フランスのジャパンブルージーンズ取扱店との共同開発で生まれた、裾が極端に絞られた最も細身のシルエットだそうです。
ジャパンブルージーンズの製品は全てワンウォッシュ済ですが、ヴィンテージジーンズは洗濯するとレングスに1cm程度の縮が生じるそうなので、サイズ選びの際はいつもより少し長めのレングスで注文したほうが良いでしょう。
経糸(たていと)のみジンバブエコットンのジーンズが一体どんな着心地なのか興味は尽きませんが、フルカウントや桃太郎ジーンズよりも1万円くらい安いので、ジンバブエコットン製ジーンズを試してみたい方には手を出しやすいブランドです。
まとめ
ファストファッションの安価なジーンズが持て囃される昨今ですが、一本くらいは長く付き合える本格的なジーンズを持っていても良いのでは?と思います。
ジンバブエコットン製のジーンズを選ぶなら、その時代の流行りのシルエットではなく、ベーシックで癖の無いスリムストレートあたりが狙い目でしょうか?
昔ながらのコットン100%のジーンズは長持ちする反面、生地に伸縮性が全くありません。少しでも長く着続けるには体型の維持が必須ですが、10年を経て同じものが着られたときは、ちょっとした感動があると思います…少なくとも私はそうでした。