もはや国民服とも言える存在になったユニクロですが、その影響力には侮りがたいものがあり、安価なユニクロ製のダウンジャケットの登場は着ぶくれの象徴だった、このアウターを一気にスタンダードな存在に押し上げました。
毎年冬になると、老若男女を問わずダウン姿の人々を見掛け、数年前よりも確実に大衆化していることを実感します。
かくいう私も、頑なに拒否していたダウンを昨年から着用し始め、そのあまりの快適さから、もっと早くから着ていれば良かった…と軽く後悔したほどですが、記念すべきファーストダウンジャケットに選んだのはコスパ最強との誉れ高い、ユニクロの『シームレスダウンパーカ』でした。
数年前の発売以来、細かなアップデートを繰り返し、この価格でこの出来栄えはユニクロ以外では不可能だと各所で話題になるほど、評判の良いダウンジャケットで雪国でワンシーズン使い続けた私も、同様の感想を抱きました。
すっかりダウンジャケットの魅力に憑りつかれてしまった私は、よりグレードの高いダウンジャケットなら一体どれくらい防寒性や快適性がアップするのか?という好奇心から、ミドルクラスの価格帯ながら大変評判の良いノースフェイスの『バルトロライトジャケット』を買い増してみることにします。
価格はシームレスダウンパーカがセール時で約10000円、バルトロライトジャケットが最安で50000円前後と価格差は5倍以上にもなりますが、両者には価格に応じた明らかな違いはあるのでしょうか?
ユニクロのシームレスダウンパーカとノースフェイスのバルトロライトジャケットを厳寒期に着比べたみた率直な感想を簡単にまとめてみます。
シームレスダウンパーカとバルトロライトジャケットを比較した感想
どちらも人気のダウンジャケットなだけに、シームレスダウンパーカもバルトロライトジャケットも各所で散々レビューされている上に詳細は仕様は公式HPでも確認できます。
同じ様な内容を記事にしても面白味が無いので、雪国住まいの私が実際にヘビロテしてみて感じた両者の違いに絞って話題にしてみたいと思います。
真冬でも日本国内の殆どの地域ではダウンジャケットはオーバースペックだと言われていて、カジュアル系ダウンで人気のカナダグースやウールリッチなどは、わざわざ日本向けにダウンの封入量を控えめにしているくらいです。
実際に着用してみると確かにその通りで、本格的なバルトロライトジャケットはもちろん、タウンユースメインのシームレスダウンバーカでも風が弱く気温5~10度の環境下ではフロントのジッパーを全開にしてどうにか許容範囲といった感じです。
暖房の効いた室内なら尚更で場所によっては拷問の様な暑さを感じるほどでした。
両者の違いを感じ始めるのは気温0度くらいからで、加えて風速5メートル以上、小雨や雪が降りすさぶ状況なら違いがよりハッキリしてきます。
どちらのダウンジャケットも高い防風性や撥水加工による耐水性を売りにしていますが、こういった環境下で着比べてみると、やはり安価なシームレスダウンパーカには限界が見え始め、0度前後の低温下で強い風に晒され続けると、背中上部・胸上部・下腹部に冷気を感じる様になります。
これらの部分がシームレスダウンパーカのコールドスポットであることは確かでハンドウォーマーポケットの影響でダウン封入量が他の部位よりも少なく、裾部分からも冷気が回り込みやすい下腹部は、特に影響を受けやすいです。
これに対して、耐候性に定評のあるバルトロライトジャケットを気温0度で風速10メートル以上、横殴りの吹雪の中で使用してみましたが、驚いたことにどの部分にも冷気を一切感じず、あからさまなコールドスポットは確認できませんでした。
アウトドアメーカーが特定の環境下を想定して作ったダウンジャケットなので当たり間と言えば当たり前の結果なのですが、価格の差がムラの無いダウン封入量とコールドスポットの有無にストレートに反映されている印象でしょうか。
一番わかりやすいのがフードまわりで、両社ともフードにまでダウンが封入された親切設計ですが、上画像で見比べるとダウンの密度やボリューム感には結構な違いがある事がわかります。
また、ダウンジャケットのあたたかさは、ダウン封入量やダウン品質の指標とされるフィルパワーなどで語られますが、体温であたたまった空気や熱を出来るだけ逃さない仕組みが大変重要で、表地の防風性能を意識して選んだ方が良いです。
この点はユニクロもかなり頑張っているのですが、恐らくシームレスダウンパーカを単体で着るよりも、インナーにウルトラライトダウン、アウターにブロックテックパーカといったレイヤリングの方が効果が高い気がします。
流石に毎シーズン、あっという間に売り切れてしまうだけあってバルトロライトジャケットの防風性能は折り紙付きで、表地のウィンドストッパーファブリクスは二重になっています。
カナダグースやウールリッチも確かにあたたかいのですが、カジュアル系ダウンは生地の風合いを残すために表地にコットンを混紡している場合が多く、防風性などの暖気を逃がさない機能性はアウトドア系ダウンに軍配が上がります。
忘れちゃいけない『寿命』の違い
機能性よりも、価格の違いが端的に反映されているのが耐久性や経年劣化といったダウンジャケットの『寿命』の部分かも知れません。
私の記憶では数年前まで無かったと思うのですが、ユニクロHP上のシームレスダウンパーカの備考欄には、以下の様な注意書きが見られます。
この商品の生地は樹脂加工品です。
新品のまま収納していても、時間の経過と共に、空気中の湿度や紫外線、熱や汚れ等により、約3年で劣化(剥離・べたつき)します。
ご存知の方も多いでしょうが、このブログでも紹介したポリウレタンの加水分解がシームレスダウンにも当てははまり、売りであるシームレスの接着部分に劣化が生じる様です。
私は色違いで2着のシームレスダウンパーカを所有していますが、購入した2016年時点ではこの注意書きが見られませんでした。
注意書きをしっかりと確認して、安心し切って購入しただけに残念な結果ですが、1万円前後のダウンパーカが『三年しか着られない』のか『三年も着られる』のか、評価が分かれる部分です。
価格が5倍だからと言って製品寿命も5倍になる訳ではありませんし、ダウンジャケットはブランドの流行り廃りが激しく、もともと耐久性に優れるアウターでもありません。
私個人としては、製品寿命が5年くらいなら合格点と考えていますが、先ほどの防風性とは逆に老舗のカジュアル系ダウンの方が長持ちする傾向にある様です。
まとめ
寿命の件も含めて結果だけ見ると、やっぱりユニクロはダメじゃん…なのですが、私が悪天候下で使い続けてみた正直な感想は『高価なだけにバルトロライトジャケットはやっぱり凄い!!』ではなく、『この値段でこの防寒性かよ…ユニクロはマジで凄いな!!』です。
実のところ、あたたかさには大きな差は感じず、着てすぐにあたたかくなる点や総フリース裏地のポケットなどはユニクロの方が優れていると感じました。
しかも、私は前述の悪天候下を3時間もほっつき歩くといったアウトドア的な使い方をしているので、タウンユースからちょっとしたアウトドア程度までならシームレスダウンパーカで十分だと思います。
因みに、バルトロライトジャケットとシームレスダウンパーカの長所をバランスよく備え、コスパにも優れるのが、シュラフメーカーとして有名なNANGA/ナンガのダウンジャケットです。
NANGA/ナンガのダウンジャケットは機能性や耐候性に優れる特徴があり、表地に使用されているオーロラテックスの防水透湿性は、水濡れで保温性が落ちるダウンジャケットの弱点を上手くカバーしつつ、暑すぎて蒸れるといったダウンジャケットにありがちな欠点を軽減しています。
上画像左の本家オーロラダウンジャケットは毎年アップデートを繰り返し、外観が『本当にコレ、ダウンジャケット?』と言ったスッキリとした見た目に進化していますし、上画像右のクリフメイヤーコラボモデルはタウンユースに適したカジュアルな仕上がりです。
ダウンジャケットとしての機能性の高さはもちろんですが、用途によってモデルが選べるのもNANGAの魅力ですね、そこそこ有名な割にユニクロやノースフェイスよりも人と被りづらい点も個人的に評価したい部分です。