私は雪国住まいなので、冬場の普段履きはブーツが主役になります。
カジュアルなレザー製や中綿入りのヌプシブーティーなど、複数のブーツをTPOによって使い分けていますが、やはり機能性に優れ雪道でも歩きやすいのはトレッキングブーツやハイキングシューズに代表される軽登山靴です。
荒れた雪道でも楽に歩けるので、ウインターシーズンは普段履きとして重宝していますし、防水性・透湿性・防滑性など機能面にも何一つ不満を感じていません。
ですが、トレッキングブーツと言えどもスポーツシューズ特有の派手な配色や幾何学的なデザインからは逃れられず、普段着の大半を占めるカジュアルウェアとの相性が最悪なのです。
ダウンジャケットとの組み合わせがギリギリ許容範囲で、その他ではアウトドア用のマウンテンパーカ―くらいしかマッチするアウターがありません。
所用で商業施設に立ち寄った際などは、我ながら『今日は登山の帰りですか?』と自問したくなるほどの場違い感があり、若干の気恥ずかしさが伴います。
そういった理由から、タウンユース出来るカジュアルなトレッキングブーツを購入する事を決意したのですが、いざ探してみるとビックリするほど選択肢がありません…
あれこれ悩みつつ最終的に私が選んだのは、クラシカルなヨーロピアンデザインが売りのオールレザーライトハイキングシューズ“KEEN PYRENEES/ピレニーズ”でした。
タウンユースでもギリギリいける?”KEEN PYRENEES/ピレニーズ”
私が今までウインターブーツ兼低山用のトレッキングブーツとして使用していたのが、上画像のサロモン”X ULTRA MID GTX“の初期モデルです。
完全防水のゴアテックス製、現在は三世代目のモデルが販売されている大変評判の良いトレッキングブーツで、ペアで950gと軽量な上に雪道でも滅多に滑る事はありませんでした。
見た目を含めてスニーカーに近い仕様ではあるものの、タウンユースに不向きなのは間違いなく、現行モデルはこの初期モデルよりも更にスポーツシューズっぽさに磨きが掛かっています。
対して今回私が選んだKEENのピレニーズは、アウトソールやトゥガードに登山靴っぽさを感じるものの、素材にレザーを使用している為かカジュアルで落ち着いた印象があります。
因みに、ビブラムソールやゴアテックスなどアウトドア界隈でお馴染みの素材は一切採用されおらず、KEEN独自の技術で成り立った結構強気なトレッキングブーツです。
現時点でのカラーバリエーションはシロップ(SYRUP)・ラテ(LATTE)・スチールグレイ(STEEL GRAY)の3色で、レディースはシロップとラテの2色のみです。
3色ともアッパーはウォータープルーフレザー、ライニングには透湿防水性のあるKEEN.DRYと呼ばれる独自素材が使用されていますが、カラーによってレザーの表面処理が異なります。
シロップは起毛感が殆ど無い滑らかなヌバックレザー、ラテとスチールグレイも革の銀面(表面)をバフ加工で起毛させたヌバックレザーですが、起毛感の強いスエード寄りな質感です。
ピレニーズはトレッキングからファッションブーツまでの用途を想定して製品化されているそうですが、欲を言えばアウトソールとトゥガードが真っ黒なせいで足下が重く見えてしまうので、素材をブラウン系にして欲しかったところです。
過去にはマホガニー(Mahogany)という、アウトソールとトゥガードが真っ黒ではない日本限定カラーも存在していた様ですが、残念ながら現在は入手困難です。
“KEEN PYRENEES/ピレニーズ”の使用感&サイズ感は?
さて、ここからは実際のサイズ感や履き心地、使用感について紹介します。
今回は明るめのカラーが欲しかったので、レザー表面が起毛したラテ(LATTE)を選びました。
真っ赤な替え紐が付属していますが、シックな見た目が好みなのでデフォルトのまま使用する事になるでしょう。
足先が丸っこい作りなので可愛らしくもありますが、シルエットが寸詰まりで少し野暮ったのでは?と心配しましたが、特に違和感はありませんでした。
足先にボリュームがある分だけ足幅にも余裕があり、ワイズがEEEくらいの方でも余裕をもって履けると思います。
重量はペアで1246g、軽量なサロモン製よりも300gほど重いですが、アッパーが総レザー製でしっかりとしたアウトソールを備えている点を考えると十分に軽量な部類に入ると思います。
タンは大変柔らかく、手で触ってみても足当たりに影響が出そうな感触はありません。
サイズ感は小さめだそうで、どこの販売店でもワンサイズ大き目を推奨していますが、私は普段28cmでワンサイズ大き目だと28.5cmになります。
残念ながら大半のメーカーで28cm以上は1cm刻みでしかサイズが無く、今回は不安を感じつつも29cmを選択しました。
実際に足入れしてみると、十分に実用範囲ではあるものの足先には結構な余裕を感じます。
本来なら、推奨サイズの28.5cmがベストなのでしょうが、私の足には28cmでも問題なかったかもしれない…というのが正直なところです。
続いて、紐で足首を固定してみますが、その際に気になったのが上部三つの金具部分です。
三つとも紐を引っ掛けるフック状になっているのですが、それまで履いていたサロモン製が最上部の一つだけだったこともあり、着脱の際には若干煩わしく感じます。
おまけにフック部分の作りが狭く、引っ掛けるだけでも手間取るのに、それが三つも連続するのですから、不慣れなうちはストレスを感じるかも知れません。
因みに、この金具は柔軟性のない素材が使われているので、間違ってもペンチで広げようなどと考えてはいけません!フックが折れて簡単に破損します。
フッドベッド/インソールには“METATOMICAL FOOTBED”と呼ばれるKEEN独自の物が使用されています。
足裏の形に合わせて立体成型されたフットベッドだそうですが、実際に取り出してみると、よくある安価なインソールと大差の無い作りです。
軽登山やウォーキングなど、しっかりと歩く事を目的として使用する場合はスーパーフィートのグリーンなど、評判の良いインソールに交換したほうが良さそうですね。
最後にアウトソールのパターンを確認してみますが、滑りやすいか否かは実際に雪道やアイスバーンを歩いてみないと評価が出来ません。
パッと見では、親指の母指球付近にフラットなパターンが見られるので、踏み込みの際に滑りやすくなるのでは?といった印象でしょうか。
長年の経験で歩行方法が既に雪道に特化しているので、あまり当てにならないとは思いますがピレニーズの防滑性については、後日追記してみたいと思います。
“KEEN PYRENEES/ピレニーズ”で実際に歩いてみた感想
慣らし履きを兼ねて、”KEEN PYRENEES/ピレニーズ”で7kmほど散歩してみました。
前述した通り、フック部分の作りに癖があるので着脱には少し手間取りますが、少し厚手の靴下を併用して足先に少し余裕のあるサイズ感です。
サイズが大き目なせいもありますが、踵のホールド感がイマイチなのでヒールカップのしっかりしたインソールは必須かも知れません。
アウトソールは本格的な登山靴を比べると柔らかいものの、一般的なハイキングシューズやトレッキングシューズよりも硬く、足裏感覚は登山靴寄りな印象でした。
少し大きめなので紐をキツめにした事が原因ですが、歩き出してから5分で足首まわりが痛くなり、途中で微調整する必要がありました。
調整後も違和感は残り続けましたが、15分歩き続けると嘘のように馴染み、30分で何の違和感も無くなります。
レザー製のトレッキングシューズは初めてなので、すっかり失念していましたが、革靴は多かれ少なかれこんな感じで足に馴染んでくれる事を久々に思い出しました。
さて、7kmの道のりを歩き終えた感想ですが、透湿性のあるライニングが使用されているとはいえ、レザー製なのでやはり蒸れました。
ですが、ゴアテックス製と比べて著しく透湿性に劣ると言った印象ではなく、同じ状況ならゴアテックス製でも蒸れを感じていただろうな…くらいの違いです。
自分の足に合わない靴はたった1km歩くだけでも苦痛ですが、問題なく7kmも歩けた時点で十分に合格点があげられるトレッキングシューズではないかと思います。
機能性の評価ばかりで、購入に発端となったカジュアルな面について全く触れていませんでしたが、こちらの方もバッチリでジーンズやクライミングパンツと特に相性が良く、今までのブーツよりも遥かに着こなしの幅が広がりました。
まとめ
タウンユースや普段使いに馴染むトレッキングブーツとして”KEEN PYRENEES/ピレニーズ”を購入してみましたが、トレッキングからファッションブーツまでという謳い文句は確かでした。
流石に本格的な登山には不向きですが、過剰なアウトドアスタイルに抵抗を感じている方は足下から見直してみては如何でしょうか?
最後にピレニーズのお手入れについてですが、ヌバックレザーのケアと防水処理にはコロニル製の防水ワックスが便利に使えます。
加えて、ラテやスチールグレイなど汚れやすい起毛革なら、同じくコロンブス製のスエードブラシBとスエードブラシCの二種類を手元に準備しておきましょう。
お手入れが捗りますし、マメにブラッシングするだけで起毛が綺麗に維持できます。