私は散歩やウォーキングと呼ぶには少し長めの距離を歩くことを趣味にしているせいか、靴には人並み以上の拘りを持っています。
数年前に足底筋膜炎を患ってからというもの、その傾向に益々拍車が掛かり、気になるシューズを見つけてはトライ&エラーを繰り返していますが、最近はクッション性重視の厚底系シューズがお気に入り。
実は足底筋膜炎の緩和にクッション性の高いシューズは逆効果……というのが定説で、大抵はお医者様から高価なオーダーメイドのインソールを薦められるのですが、私の場合は不思議とこれが逆効果でした。
結局、二年近く回復せず悩み続けた末に、ダメ元で履いてみた厚底系シューズによる効果が劇的で、それ以来すっかり虜になっていますが、最近は様々なシューズメーカーやアウトドアメーカーからクッション性重視の製品がリリースされ、情報収集が追いつかないくらいです。
さて、新作を見掛ける度に次々と手を伸ばしてしまう有様ですが、アウトドアシューズで知られるKEEN/キーンからも軽量でクッション性に優れるシューズが登場した模様。
以前にこのブログで紹介した、KEENのハイキングシューズこと「ピレニーズ」の履き心地が良好だっただけに期待が膨らみますが、靴にとことん拘れる生粋のシューズメーカーが手掛けているということもあり俄然興味が湧きますね。
私情100%の前置きが長くなってしまいましたが、今回は軽量さとクッション性に注力したKEENのハイパフォーマンストレイルシューズ「NXIS/ネクシス」の詳細や実際の使用感について紹介してみたいと思います。
街から低山まで使えるアウトドア靴、KEEN「NXIS/ネクシス」の詳細&サイズ感
さて、件のNXIS/ネクシスですが、防水性重視のモデル「EVO WP」と通気性重視のモデル「SPEED」の2種類があり、それぞれにミッドカットとローカットがラインナップされています。
画像上段の二足が防水仕様のEVOで、下段が通気性が高くより軽量なSPEEDになりますが、配色やロゴデザインはSPEEDの方がシックですね。
カラバリはそれぞれ2~3種類ありますし、メンズとレディースでも異なりますが、防水性は特に求めずタウンユースがメインなら、SPEEDの方がカジュアルウェアに合わせやすいかも知れませんね。
因みに、私が選んだのは防水仕様のローカットモデル「NXIS EVO WP」でカラーはDark Olive/Black Olive、サイズはUS10の28cmです。
ローカットは真冬以外のオールシーズン履けますし、防水透湿仕様なので良い意味で雑に使い倒せるのも魅力。
また、黒系カラーは土埃が目立ち、逆に白系カラーは汚れるのが嫌でガンガン履けなくなる……といったジレンマがあるので、汚れが目立たないアースカラーが私好みです。
気になる重量ですが、実測で425gと何故かカタログスペックよりも重めの仕様でした。公称値は381gですが、これは小サイズを測定した際の値なのかも知れません。
単純に個体差に寄るものなのか、途中で製品仕様が変わったのか、それとも大サイズによる増量分なのかは不明ですが、50g程度なので恐らくサイズが原因でしょうね。
クッション性の要、ソール部分に目を移すと、柔らかめのEVAミッドソールと硬めのアウトソールの二層構造。
フットベッド上面から靴底までの厚さは4cmほどでしょうか、ドロップは8mmで足が自然に前に出てくれます。
外側からではヒールが高く見えず、この辺りは高下駄チックなダッドスニーカーと比べて、良い意味で控えめな印象。
因みに、チラッとテキストロゴが見えますが防水透湿メンブレンはゴアテックではなく、お馴染みの「KEEN.DRY」です。
靴底もKEEN独自のノンマーキングラバーアウトソール、ラグ4mmで踏み跡が残りづらい仕様。
ノーマーキングソールは床を傷めない屋内用の物がメジャーですが、こちらはトレイルの土壌を荒らさないための配慮でしょうか?
何者かに追跡されなようにする……といったことではありません、多分。
続いて、おもむろにフットベッド/インソール取り出してみると、厚みのあるモチモチした素材が使われていました。
サイズ28cmで寸法は288mm x 98mmほど、アーチサポートが欲しいなら別ですが、割と作りがしっかりしているので、わざわざインソールを交換する必要はなさそうです。
足先にはしっかりとしたトゥ・プロテクションが備わり、見慣れないスリットも入っていました。
足の指をスムーズに動かせるようにする工夫らしく、デザイン的にも良いアクセントになっています。
真っ黒なトゥガードは足下が重く見えてしまうので、個人的にブラウンカラーなのがお気に入り、アッパーとも統一感が出ていてカジュアルな面持ち。
機能面で目を引くのがこちら、赤矢印部分の「KONNECTFIT/コネクトフィット」と呼ばれる仕組みです。
補助的なシューレースが足首まわりをぐるり一周していて、メインのシューレースと連動する形で踵や足首まわりのホールド感を高めてくれます。
NXISシリーズはスピードハイクでの使用も考慮されているそうで、こういった「走れる」仕組みが備わっているのも面白いところ。
「走れる」アウトドアシューズという点に関連しますが、アウトソールの質はどちらかといえばスニーカーやランニングシューズ寄りでしょうか。
両手で靴を前後から圧し潰しても、簡単に湾曲しない硬さはあるものの、足先が屈曲する「先調子」ではなく、アウトソールの中央近くが屈曲する「胴調子」の傾向が強いですね。
さて、気になるサイズ感ですが、素足の実寸が27.5cm、足囲24.5cmの私の場合でUS10/28cmがジャストフィットでした。
KEENの靴は足先に余裕を持たせた傾向にありますが、NXISは幅広のラストを使って指が圧迫されづらい広めのトゥボックス構造が採用されているため、今まで以上に不快感の無い履き心地です。
記載が見られないので実際のワイズは不明ですが、体感でEE並みのサイズ感となり、日本人に多いとされる幅広足の方にフィットしやすい仕上がりになっている印象ですね。
幅広足の方も含めて、素足の実寸よりもワンサイズ上の0.5cm大き目がサイズ選びの目安になるでしょうか。
最後にちょっとだけに気になった点と注意点を少し。
素足で試し履きしたせいもありますが、履き口周辺の素材に硬さを感じました。スニーカーだともう少しふっくらと柔らかいライニングが使われているのですが、この部分だけはトレッキングシューズを踏襲した硬質な仕上がりですね。
前述したKONNECTFIT/コネクトフィットの調整次第では、甲高な方や足首の太い方が影響を受けやすくなるので、履き始めはフィット感を小まめに探った方が良さそうです。
また、防水靴のライナーは内部への浸水を防ぐために袋状のブーティー構造になっています。
白矢印の部分のように、シュータンとアッパーの境目部分にマチのような物が備わっていて、相性が悪いとこの部分が足の甲を圧迫し、歩行に痛みを伴います。
今回のNXISでは問題ありませんでしたが、こちらも甲高の方や足首の太い方が不快感を覚えやすい箇所なので、最初の数回は変な折り癖がついてしまわないように、この部分を整えてから履くことをオススメします。
これら二つの点は、構造上ローカットモデルで顕著になるので、甲高だったり足首が普通よりも太い自覚のある方は、あえてパッドの備わったミッドカットモデルを選ぶのも手でしょうか。
舗装路・砂利道・里山を散歩、KEEN「NXIS/ネクシス」の履き心地は如何に?
まだ肌寒さは残りますが天気に恵まれたため、近場の里山を目指してNXIS/ネクシスの試し履きをしてみます。
雪解け間もないため、ところどころウエットコンディションですが、折角の防水仕様なので遠慮なく進ませて貰いましょう。
気になるNXISの履き心地ですが、前述した広めのトゥボックス構造の効果で大変足馴染みが良く、とても下ろし立ての靴とは思えません。
慣らし履きを兼ねた散歩のつもりでしたが、足先や足幅に十分な余裕があり、それでいて靴の中で足が遊ばない絶妙なフィット感です。
また、シューレースで行う通常の調節に加えて、足首まわりをコネクトフィットで調節し、履き味に変化を持たせるのも楽しいですね。
キツめに固定して走っても良いですし、下り坂で足先の負担を軽くするのにも役立ちます。クッション性の高さを活かして、ゆるくリカバリーシューズ風に履くのも面白いかも知れません。
シューレースとコネクトフィットを駆使することで大変自由度の高い調節ができ、様々な足型に馴染んでくれる間口の広いシューズという印象を受けました。
最寄りの里山なのでガレ場なんて大層なものはありませんが、途中のグラベルも違和感なく歩けます。
NXISの特徴のひとつであるクッション性は、ふっくらと柔らかいマシュマロ風というよりも、しっかりとコシのあるグミ風の感覚ですね。
踵部分は元より母指球寄りな部分にもハッキリとした弾力を感じ、足を前に蹴り出す際にサポートしてくれるような一面も。
登山靴やアプローチシューズと比べると、シャンクやアウトソールの弱さは否めませんが、非常にクッション性の高いミッドソールのお陰で、砂利道を無造作に歩いても目立った突き上げ感はありませんでした。
舗装路、砂利道、山道を経て目指す里山に到着しましたが、足に目立った異変も無く、蒸れも殆ど感じません。
足底筋膜炎を患って以来、不向きなシューズだと計ったように6km前後で足裏に違和感が出ていたのですが、クッション性の高さに嘘偽りは無いようで、NXISは往復15kmの道のりを快適にサポートしてくれました。
まとめ
私なりにNXIS EVO WPのローカットモデルについて感想をまとめてみましたが、何だかんだいっても山道でドロドロに汚しても簡単に水洗いできるのが良いですね、お手入れが苦になりません。
また、実際に履いてみるまでは、デザイン的にタウンユースでは厳しいかな……と思っていたのですが、予想していたよりもジーンズとの相性が良く、街からアウトドアまでシームレスに使えそうな気がしています。
足先や足幅の作りがとにかく丁寧で、海外ブランドの靴は狭くて痛い…とお悩みの方は、一度試してみては如何でしょう?