このブログは洋服の話題を中心にしていることもあり、サイズの話に触れる事が多いです。
トップスなら着丈(きたけ)や身幅(みはば)、ボトムスなら胴囲(どうい)や股下(またした)といった言葉を頻繁に使っていますが、今回はあえて股上(またがみ)についての話をしてみたいと思います。
股上の長さとパンツの種類
股上(またがみ)とはズボンやパンツの股間(股の付け根)からウエスト(前側)までの長さのことです。
フロントジッパーのある部分の寸法と言った方わかりやすいのですが、本来この部分は前ぐりと呼ばれ、股上とは少し異なります。
本当の股上は太腿(ワタリ)の水平線中央からベルト下までを垂直に測った寸法の事ですが、殆どのブランドやメーカで「前ぐり=股上」とされています。
この部分の寸法が長いと「股上が深い」、短いと「股上が浅い」と表現され、パンツの着心地やシルエットに大きな影響を及ぼします。
股上の深いパンツはハイライズ(ハイウエスト)と呼ばれ、その逆に股上の浅いパンツはローライズ(ローウエスト)と呼ばれますが、フォーマルを除いた現在の主流はローライズ寄りのミディアムライズ(ミディアムウエスト)といった感じでしょうか。
この流れは2000年前後に国内で一般化したと言われていますが、私の記憶でも確かにその時期くらいからローライズ仕様のジーンズが増えはじめ、ちょうどネット通販が広く利用され始めた時期と重なった事もありサイズ選びで何度か失敗した事を良く覚えています。
ノーマルウエストを2サイズ分大きくした物がローライズウエストの寸法に相当するなどの、大まかな換算を知っていれば、不親切な当時のサイズ表でも失敗せずに選べますが、出回り始めた頃は、ショップのサイズ表記がノーマルウエストと混同されていたり、ローライズであることの注意書きが無いなどが当たり前の状態でした。
ユニクロのサイズ表記を見てわかるように、現在ではヌードサイズと仕上がりサイズが区別されているのが普通ですから、ネット通販でのリスクも随分軽減されたように感じます。
「ローライズ」と「ハイライズ」を分ける基準
現在はローライズ気味のやや浅い股上が主流になりすぎて、もはやローライズが通常サイズのような扱いになっていますが、どれくらい股上の長さを基準にローライズとハイライズを区別しているのでしょうか?
当然の事ながら、メンズ・レディースを問わずパンツのサイズによって股上の長さも変わってしまうのでアバウトな数値しか出せませんが、基準は以下の様になります。
レディース
ローライズウエスト: 股上が23cm以下
ミディアムウエスト: 股上が23~25cm程度
ハイライズウエスト: 股上が25cm以上
メンズ
ローライズウエスト: 股上が20cm以下
ミディアムウエスト: 股上が20~25cm程度
ハイライズウエスト: 股上が25~30cm以上
サイズ的に男性のボトムスの方が大きくなる筈なのに、股上は全体的に男性の方が浅い作りになっています。これは男女の体型の違いに寄るものらしく、ローライズ仕様となると輪を掛けて股上が浅くなり、20cm以下も普通に見られます。
「ローライズ」と「ハイライズ」それぞれの特徴は?
当たり障りのない着心地を求めるならミディアムウエストでしょうが、ローライズとハイライズにはそれぞれどんな特徴があるのでしょうか?
ローライズ(ローウエスト)
ローライズはベルトのラインがヘソよりも下側になるので、お腹まわりが圧迫されず窮屈な感じがしません、またウエストを覆わないことで腰まわりをスッキリさせ小尻に見せる効果を期待できます。
反面、屈んだ時に下着や背中が容赦なく露出するという欠点があり、着心地に慣れていないと下半身に妙な落ち着きの無さを感じます。
因みに、同じローライズのパンツでも前股上と後股上の長さに差を設ける事でこの欠点を補っているパンツも見られ、ローライズは価格やブランドによって着心地に大きな違いがあります。
ハイライズ(ハイウエスト)
レトロなイメージが伴うハイライズですが、下半身全体を覆ってしまうため腰周りが野暮ったく見え、モンペやジャージの様になってしまうのが欠点でしょうか。
とは言え、ハイライズは数年周期で流行ってしまう妙な存在で、最近でも脚が長く見えると言う理由から再び表舞台に立っています。
ハイライズは下半身の割合が増えて見えるので、確かに脚長効果を期待できますが、レディースで30cmを超える股上は体型は元より着こなしに相当のセンスが求められそうです。
なぜ?男性に根強い人気のハイライズジーンズ
欠点ばかり目立つハイライズですが、実は「ハイライズ以外は絶対無理!!」という方も多く、特に男性の場合で股上が25~30cmくらいのジーンズに根強い人気があります。
やはり、履いた時に安心感や安定感があるというのが一番の理由で、腹部を安易に晒したくないという心理的な理由も含まれていそうです。IBSと呼ばれる過敏性腸症候群に悩む男性が多い事はよく知られていますが、一部でハイライズが好まれる理由と無関係ではない気がします。
ハイライズを取り扱っているブランドは?
周期的な流行と一部の愛好者に支えられている印象のハイライズですが、そのせいか各ジーンズブランドでは安定して取扱いがあります。
メンズは復刻モノやヴィンテージモノを中心に『Wrangler/ラングラー』『EDWIN/エドウイン』『Levi’s/リーバイス』『Lee/リー』など有名処のブランドが名を連ね、レディースではエドウインのレディースラインである『SOMETHING/サムシング』を筆頭に『Wrangler/ラングラー』『 DIESEL/ディーゼル』『Mrs.Jeana /ミセスジーナ』などでハイライズの取扱いがあります。
メンズ・レディース共にハイライズに積極的なのが日本を代表するジーンズブランドのエドウインと世界三大ジーンズブランドの一つラングラーで、特にラングラーは日本では今ひとつ存在感の薄いブランドだけに、意外なところでようやく日の目を見た感じでしょうか。
各ブランドのハイライズはただの復刻という訳ではなく、シルエットや股上の長さを工夫してあるものが多く、ミディアムウエストに近いすっきりとした仕上がりになっているので、ローライズに慣れた若い方でも抵抗無く履けるようになっています。
まとめ
股下や胴囲と比べると、あまり注目されることの無い股上について話題にしてみましたが、私個人はローライズもたまに履くミディアムライズ派でしょうか。
因みにユニクロのメンズジーンズはサイズ30で股上が24cmほど、最も股上が深い仕様のレギュラーフィットジーンズでも25cmです。過去にややローライズ気味のスリムフィットを着用した事がありますが、前股上と後股上の差が小さく着心地がイマイチに感じました。
ローライズのパンツは腹部を圧迫しない様に前股上が浅く、尚且つお尻を包み込ように後股上が深いタイプが最も履き心地が良いと思います。個人的にLeeの“AMERICAN RIDERS/アメリカンライダース”シリーズがオススメで、ストレートなら101、今風のテーバードなら203、どちらも股上はしっかりしているのに見た目に野暮ったさを感じないジーンズです。