最近ではアスレジャースタイルと呼ぶそうですが、ノースフェイスやパタゴニアなどのアウトドアブランドのウェアを、街着や普段着としてシームレスに取り入れる方が増えています。
今回紹介するソフトシェルパンツも、そういった着こなしが楽しまれる様になったファッションアイテムの一つで、数年前にノースフェイスの『アルパインライトパンツ』がカジュアル用として大ヒットして以来、アウトドアブランド各社からは似たようなコンセプトの製品が続々とリリースされています。
私もこのアルパインライトパンツを愛用している一人で、細身で先細りになった美しいテーパードシルエットや足上げに抵抗感の無い抜群の履き心地など、数年に渡って着続けてもこれといった不満を感じない逸品です。
残念ながら、人気に火が付き始めた4年前に購入したパンツがそろそろ寿命を迎えつつあり、当初は同じアルパインライトパンツを再購入する気満々でしたが、他のソフトシェルパンツも試してみたい!と言う好奇心には抗えず、あえて他社製のソフトシェルパンツに挑戦してみる事にしました。
前置きが長くなりましたが、今回は備忘録を兼ねて私の購入候補に上ったカジュアル寄りな『ソフトシェルパンツ』を幾つか紹介してみます。
知っておきたい『ソフトシェルパンツ』の欠点
ちょっとした注意点として、自分好みのソフトシェルパンツを選ぶ上で必ず知っておくべきことがあります。
ジーンズやチノパンなどのカジュアルパンツと違い、本来アウトドア用として使われるソフトシェルパンツには機能性や耐久性を高める目的で、ナイロン・ポリエステル・ポリウレタンなどの化学繊維が多用されています。
同じ化学繊維でもナイロンやポリエステル100%ならば特に問題は無いのですが、ストレッチ性を高める目的でポリウレタンを混紡したパンツは、使用頻度に関わらずおよそ四年ほどで経年劣化してしまう欠点があるのです。
冒頭で私のアルパインライトパンツが『寿命を迎えつつある』と説明しましたが、今のところ目に見えた劣化は無いものの、まともに着用できるのは後一年が限界かも知れません。
因みに型落ちのスポーツウェアが極端に値下りする理由もコレで、カジュアルウェアでもスポーツウェアでも樹脂加工されていたりポリウレタン混紡の衣類は、前年のモデルという時点で既に寿命が1/3程度短くなっている事になります。
私の場合、ソフトシェルパンツをストレッチジーンズ並みの消耗品と考えて購入しているので、特に抵抗感はありませんが、コットン製のカジュアルウェアの様に愛着をもって長く着続けたい方は、同じ化繊でもポリウレタンを使っていない製品を選ぶように心掛けましょう。
アルパインライトパンツだけじゃない!オススメの『ソフトシェルパンツ』まとめ
ザ・ノース・フェイス/THE NORTH FACE『アルパインライトパンツ』
トップバッターはやっぱりコレ!もはや説明不要の大人気パンツ、ノースフェイスの『アルパインライトパンツ/Alpine Light Pant』です。
裾に向かってテーバードした綺麗なシルエットやベルトレスな使い勝手の良さ、ストレッチ性抜群で抵抗感ゼロの着心地は既に多くの愛用者を獲得していています。
欠点は前述したポリウレタン混紡による製品寿命と、テーパードシルエット故にレングスが若干短い事くらいでしょうか?
上画像の左がアルパインライトパンツ、右がアルパインライトパンツを更にカジュアル寄りにリファインした『ドーローライトパンツ/Doro Light Pant』です。
私はドーローライトパンツも所有していますが、こちらには SOLOTEX/ソロテックスと呼ばれるコットンに近い手触りの新素材が使われ、製品寿命を縮めるポリウレタンが使用されていません。
春から秋までの3シーズンに渡ってドーローライトパンツを使ってみたところ、アルパインライトパンツよりも生地が薄く速乾性に優れる特徴があるため、蒸れやすい夏場は大変重宝しました。
ストレッチ性は流石にアルパインライトパンツに一歩及ばず、薄手なので冬場には着られませんが、街着や普段使い用として長く着続けたい方には、断然ドーローライトパンツがオススメです。
モンベル/mont-bell『マウンテントレーナーパンツ』
個人的に、まさか…と思ったのがコチラ、アウトドア界のユニクロことモンベルの『マウンテントレーナーパンツ』です。
モンベルのパンツと言えば、万人向けに良い意味でおっさん臭いシルエットのパンツが主流でしたが、このマウンテントレーナーパンツやマウンテンガイドパンツなど、最近になってスリムフィットのパンツがチラホラ見受けられる様になりました。
この手のパンツは太腿部分にジッパー付きのポケットが設けれていることが多く、街着としては少し抵抗感のあるデザインなのですが、マウンテントレーナーパンツのポケットは左右と右ヒップのみの必要最低限な仕上がりです。
モンベルと言えば、ロゴマークやリフレクターの位置が気になるところですが、右ヒップの上の一箇所のみと控えめなのも好印象ですね。
シルエットはアルパインライトパンツの様なテーパードではなく、どちらかと言えばスリムストレートに近いですね、ストレッチ性の高い中厚手の生地には雨や雪などを弾く撥水加工が施されています。
残念ながらポリウレタンを5%混紡していますが、他の製品よりも低価格なので、消耗品と割り切ってヘビーローテーションした方が良いでしょう。
アウトドアリサーチ/OUTDOOR RESEARCH『 フェロッシーパンツ』
正直、街着として使えるソフトシェルパンツとしてはギリギリの立ち位置ですが、アウトドアリサーチの 『フェロッシーパンツ/FEROSSI PANTS』も用途次第ではオススメな選択肢です。
腰部にウェービングベルトが無く別途ベルトが必要だったり、太腿部分にポケットが設けられているなど、ソフトシェルパンツとしてはアウトドア寄りなのかカジュアル寄りなのかわからない、どっち付かずな部分が目立ちますが、他のパンツに無い特徴としてフェロッシーパンツには裾部分にドローコードが備わっています。
シルエットは若干細めのストレートで、ウェービングベルトが無く、左右ポケットもジーンズの様な作りになっているお陰で、腰回りはカジュアルパンツ並みにスッキリしています。
フェロッシーパンツもポリウレタンの別名であるスパンデックスを14%混紡しているので経年劣化は免れませんが、混紡率がアルパインライトパンツ以上に高く、抜群のストレッチ性を誇ります。
テーパードタイプや細すぎるパンツが苦手な方にオススメで、使い勝手の良い裾のドローコードや太腿部分のポケットなど、半カジュアル半アウトドア的な用途に向いているソフトシェルパンツでしょうか。
コロンビア/Columbia『 ホワイトストーンポイントソフトシェルパンツ』
個人的に隠れた逸品だと思うのが、コロンビアの『ホワイトストーンポイントソフトシェルパンツ/ Whitestone Point Softshell Pant』です。
コロンビア製のパンツはブーツと併用することを想定しているためか、他社製と比べ総じてレングスが短い傾向にあり、カジュアル用として着こなすと、人によってはアンクルパンツの様な見た目になってしまう欠点があるのですが、このホワイトストーンポイントシェルパンツだけは例外です。
全サイズで必要十分な股下80cm前後のレングスがあり、 裾にかけてやや細身の仕上がりはスッキリとした着こなしが出来ます、おまけにポリウレタンを使わずにストレッチ性を実現しているので、経年劣化を気にせずに長く付き合える優れモノです。
このパンツはアウトドア用パンツをカジュアル用に仕上げたのではなく、カジュアル用パンツをアウトドア用に仕上げた真逆のコンセプトで作られています、それ故にウエストまわりやジップ仕様のポケットなど、腰まわりが少しごちゃごちゃしているのが難点ですが、そこさえ気にならなければ、どちらの用途でも大活躍してくれるソフトシェルパンツです。
因みに、毎年リリースされるコロンビアの定番商品では無いので、気になる方は在庫がなくなる前に確保しておいた方が良いでしょうか。
マムート/MAMMUT『 ソフテックトレッカーズパンツ』
アルパインライトパンツ以外の選択肢として、じわじわと人気を高めているのがマムートの『 ソフテックトレッカーズパンツ/SOFtech TREKKERS Pants』です。
ポリウレタンの混紡率は11%とアルパインライトパンツとほぼ同じ値ですが、こちらの方が生地がやや薄いせいか、ストレッチ性がより滑らかに感じる着心地です。
ウェービングベルトの他に何故かベルトループも備わっていて腰まわりが少し煩い印象ですが、細身で美しいシルエットと着心地の良さはアルパインライトパンツのライバルに相応しい仕上がりと言えるでしょうか。
左大腿部にマムートのトレードマークであるマンモスの刺繍が施され、右膝裏には控えめにマムートのテキストが刺繍されていますが、カジュアルウェアとして着こなす場合に、この2点のワンポイントは人によって評価がわかれる部分かも知れませんね。
ソフテックトレッカーズパンツはヒップやワタリに余裕を持たせ、膝下から細身になるテーパード気味のスリムストレートですが、ウエストの作りがヒップに比べてタイト目になっているので、お腹まわりが気になる方は、いつもよりワンサイズ大き目を選んだ方が良いでしょう。
ピークパフォーマンス/PeakPerformance『シビルパンツ/Civil Pants』
次にブレイクするのはこのパンツかも知れない…と一部で囁かれてるのがピークパフォーマンスの『シビルパンツ/Civil Pants』です。
上画像を見てもわかりますが、アウトドア用パンツの機能性を備えつつも外観はカジュアルパンツと見紛う仕上がりになっていますね。
画像左が無印の『シビルパンツ/Civil Pants』で、ベルト必須、裾ジッパーあり、右大腿部に隠しポケット、ヒップが二重仕立て、ポリウレタン不使用と言った特徴があり、軽量板にあたる画像右の『シビルライトパンツ/Civil Lite Pants』には、ゴム&紐ウエスト、裾ゴム仕様、ポリウレタン6%混紡などの特徴があります。
どちらも先細りのスッキリとしたシルエットで、着心地や機能性にも優れますが、寿命を気にせず長く使いたいなら無印のシビルパンツ、割り切ってカジュアルウェアらしい使い勝手を求めるならシビルライトパンツと言う選択になるでしょうか。
欠点は価格が割高なのとサイズ選びが少し難しい点で、ウエストやヒップまわりに余裕を持たせた作りになっているため、普段よりもワンサイズ小さ目を選んだ方が失敗が少ないかも知れません。
ミレー/Millet『ティフォン50000 ウォームストレッチトレックパンツ』
最後に紹介するのが、ミレーの『ティフォン50000 ウォームストレッチトレックパンツ/TYPHON 50000 WARM ST TREK PANT』です。
このパンツは厳密に言うとソフトシェルパンツではありませんが、ハードシェルパンツと同じ機能性を備えつつ、ソフトシェル並みの着心地を実現した、結構凄いパンツなのです。
一応、レインウェアやハードシェルに分類され、実用レベルの防水・防風・透湿性を備えていますが、着心地や生地の手触りは従来のそれとは一線を隔し、初めて着用した方はあまりの違いに驚くと思います。
このパンツには起毛裏地のあるウォームタイプと起毛裏地のない無印タイプがありますが、真夏に使う以外なら大きな違いは感じず、どちらも裏地の肌触りがレインウェアとは思えないほど良いです。
因みに、中間層のメンブレンはミレーの新素材『ドライエッジ ティフォン 50000』で素材の表示はナイロン100%となっています、とりあえずポリウレタンは使用されていない様ですが、寿命については少し情報不足でしょうか。
価格も手が届きやすく、個人的に一押しのパンツなのですが、悲しいかなサイズ感が少しチグハグで、ウエストサイズに対してレングスが極端に短い欠点があります。
上画像右を見ていただくとわかりますが、ジャストサイズを選んでもアンクルパンツの様な見た目になってしまい、ハイカットのブーツと合わせたり、ゲイターを併用するなどの工夫をしないと、せっかくの防水性が活かされません。
人によっては問題なく着られますが、細身で長身の私はこれが原因で泣く泣く手放す羽目になりました。
まとめ
街着や普段使い用としてカジュアルに着られるソフトシェルパンツを幾つか紹介してみましたが、カジュアルウェアとしても十二分に活用でき、ポリウレタンの経年劣化とも無縁なノースフェイスの『ドーローライトパンツ』、ピークパフォーマンスの『シビルパンツ』の二つが、特に完成度が高く感じました。
また、着心地重視で4年も着られれば十分なら、マムートの『ソフテックトレッカーズパンツ』、ピークパフォーマンスの『シビルライトパンツ』、モンベルの『マウンテントレーナーパンツ』あたりも魅力な選択肢だと思います。
因みに、最終的に私が選んだのは価格が手頃でシルエットも綺麗だったマムートの『ソフテックトレッカーズパンツ』で、ソフトシェルパンツ特有の抵抗感の無い履き心地は、人気の火つけ役となったアルパイライトパンツを上回る快適さでした。
今のところ特に不満を感じていませんが、機会があれば評判の良いシビルパンツも試してみたいところですね。
余談ですが、ソフトシェルパンツの多くに採用されれいるナイロン製のウェービングベルトは、摩擦や摩耗でカジュアル系トップスの裾や裏地を痛めてしまう事があるので、ウエスト部分に紐やドローコードが採用されているか否かも、カジュアルウェアとして使う上での、ちょっとした判断要素になると思います。